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不倫相手に対する高額の不倫慰謝料が認められるのはどんな場合?

1.はじめに

配偶者が不倫をしていたことが発覚した場合、できるだけ高額の慰謝料を不倫相手に請求したいと考える方は少なくありません。ただ、弊所の別のコラムでも紹介したとおり、不倫慰謝料の相場は一般的には50万円〜300万円などと言われています。この金額を低いと感じる方は少なくないでしょう。

一方で、この相場よりも高額の慰謝料が認められた裁判例も存在しています。

今回のコラムでは,不倫相手に対する高額の慰謝料が認められた裁判例をいくつか紹介し,どのような場合に高額な慰謝料が認められるか解説していきます。

 

2.慰謝料500万円が認められたケース

(1)事案の概要

浦和地方裁判所昭和60年1月30日判決は、原告である夫が、妻の不倫相手に対して慰謝料請求をした事案について、慰謝料500万円の支払いが認められました。

(2)具体的な中身

裁判所はどのような理由から500万円という高額な金額を認めたのでしょうか。裁判所は様々な事実を摘示していますので、それらの事実を見ていきましょう。

ア 妻と不倫相手男性の関係

妻と不倫相手は、昭和54年頃、スナックの客同士として知り合い、次第に仲を深めていきました。最初は一緒に食事などをするだけの関係でしたが、昭和55年頃、肉体関係を持つようになり、その後は頻繁にラブホテルに通うようになりました。

その後、二人は京都、大阪や新潟に旅行に行くなど親密な交際を続け、二人の不倫関係は昭和57年夏ころまで続きました。

イ 妻と不倫相手が多額の金銭を費消したこと

この事案において、妻は、夫婦の貯金を使い込むだけでなく、夫の名前を使って勝手に借金をし、ときには夫を騙して借金をさせました。最終的に、妻は600万円以上の金銭を不倫相手との交際で使用しました。

なお、夫はなんとかお金を工面して、妻が勝手に作った借金を返済しました。

ウ 妻が家庭を顧みなくなったこと

妻は、不倫相手との関係に溺れ、家事を放棄するようになりました。また、家事をしないだけではなく、子供の面倒も見なくなりました。

エ 夫と妻が離婚したこと

この夫婦は昭和33年に結婚しました。しかしながら、上記の妻の不倫が原因となり、二人は昭和57年9月22日に離婚しました。

オ 妻が夫の親族の世話などで多大な精神的疲労を抱えていたこと

夫は貿易会社に勤めていたため、出張で自宅にいないことも多く、その一方で、妻は夫の親族と同じ敷地内に住んでおり、その親族の世話も行っていたため、夫のいない自宅で大きな精神的疲労を一人で抱えることになりました。夫婦間でゆっくり話す時間もなく、夫は妻の心情に十分に配慮することができませんでした。

カ 不倫相手と妻のどちらが主導的な立場であったか

妻は、自らの心の隙間を埋めたいという欲求があり、不倫相手と肉体関係を持ちました。そのため、不倫相手が妻を一方的に誘惑し、不倫関係を主導したわけではありませんでした。

(3)なぜ500万円という高額な慰謝料になったか

一般的に、慰謝料の金額は、不倫の期間、夫婦の離婚の有無、夫婦の婚姻期間の長短、子供の有無、その他にも様々な事情を加味して決められます。

この事案においては、夫婦の結婚期間が約20年と長かったこと、不倫相手と妻が頻繁に会っていたこと、妻が家庭を顧みなくなったこと、最終的に夫婦が離婚をしたことなどの事実は、慰謝料が大きくなった原因になっていると考えられます。

ただ、これらの事情は不倫事件においては比較的よくある事情とも言えます。この事案において特に重要なのは、妻が借金を含めて夫に対して数百万円の規模の財産的被害を与えている事実と考えられます

(4)注目ポイント

以上のとおり、この事案を踏まえると、不倫した配偶者が不倫相手との関係に溺れ、不倫関係のために財産を使い込むなどして、大きな財産的被害が生じた場合には、慰謝料の金額が大きくなる可能性があります。

 

3.慰謝料400万円が認められたケース

(1)事案の概要

東京地方裁判所平成25年8月22日判決は、原告である夫が、妻の不倫相手に対して慰謝料請求をおこなった事案です。この件では、慰謝料400万円の支払いが認められました。

(2)具体的な中身

この事案についても具体的な中身を見ていきましょう。

ア 婚姻期間

夫と妻は、平成22年3月に結婚しましたが、妻の不倫もあり夫婦間の関係は悪化し、平成24年1月に夫が自宅を出る形で別居が開始しました。二人は別居をしたものの、離婚にまでは至りませんでした。

イ 不倫関係の中身

妻と不倫相手は職場で知り合い、平成23年6月から約1年間、不倫関係を継続しました。この事案では、妻は不倫により妊娠し、二度も人工中絶手術を行いました。

ウ 夫の精神的苦痛の程度

夫は、妻が不倫していること及び妻が人工中絶手術を行ったことを知り、多大な精神的苦痛を受け、適応障害、睡眠障害などと診断されました。その後、夫は継続的に通院するようになりました。

エ 夫のキャリアの選択肢が狭められたこと

夫は大学の神学部を優秀な成績で卒業し、カトリックの宗教的指導者としてのキャリアを希望していました。しかしながら、妻の不貞行為を知り大きな精神的ショックを受け、さらに妻が人工中絶手術を受けたことにより多大なショックを受けたこと、ひいては妻との婚姻関係の破綻により、宗教的指導者としてのキャリアの選択肢が閉ざされるか,少なくとも狭められてしまいました。

(3)なぜ400万円という高額な慰謝料になったか

この事案は、夫婦は離婚にまで至っておらず、また婚姻期間も短い点などからすると、あまり高額な慰謝料が取れる事案とは考えられません。そのため、夫側が不倫により適応障害などの病気にまでかかってしまうほどの精神的打撃を受けた事実、不倫により夫の宗教的指導者としてのキャリアの選択肢が閉ざされた(少なくとも狭められた)事実が重要視されたと考えられます

(4)注目ポイント

この事案を踏まえると、不倫により病気になるほどの精神的打撃を受けた場合や、さらにキャリアを含め不倫により仕事に大きな影響が出た場合などにはその精神的打撃は大きいと考えられ、高額の慰謝料が認められる可能性があります。

 

4.最後に

以上のとおり、不倫により多額の財産的被害が生じた場合や、不倫で将来のキャリアが閉ざされそれにより大きな精神的打撃を受けた場合など、特殊な事情がある場合には、慰謝料が高くなる可能性があります。一方で、慰謝料額は様々な事情を考慮して決められますし、慰謝料額は裁判官の裁量によるところも大きいため、これらの事情があったとしても、必ずしも高額な慰謝料が認められるわけではありません。

いずれにせよ、あなたが不倫相手から高額の慰謝料を勝ち取りたい場合、上記のような裁判例をはじめ、過去の数多くの裁判例を踏まえて効果的な主張・立証を行う必要があります。

逆に、あなたが高額の慰謝料を請求された場合には、過去の数多くの裁判例を踏まえて、慰謝料の減額要素となる事実をしっかりと主張・立証する必要があります。

弁護士も得意な分野・不得意な分野がありますので、不倫慰謝料を得意とし、不倫慰謝料に関する数多くの裁判例を踏まえて主張立証をすることができる弁護士に相談することをお勧めします。

 

横浜シティ法律事務所には、不倫慰謝料請求を数多く手掛けた弁護士が在籍しています。まずは一度ご相談ください。

 

 

 

 

 

 

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