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風俗店の利用と慰謝料請求

1.はじめに

現在、日本では数多くの風俗店が営業しています。違法な風俗店を含めると、1万店舗以上もあると言われています。風俗店の営業が禁止されている国もありますので、日本では風俗店は比較的身近なものとして存在していると言えるでしょう。

今回のコラムでは、風俗店の利用と慰謝料請求などの法的措置に関して解説します。

 

2.配偶者が風俗店を利用している!?

妻が夜遅く帰宅した夫のスーツを片付けていたところ、夫のスーツのポケットから風俗店のカードを見つけた、などという話を耳にすることがあります。

あなたの配偶者が風俗店を利用していた場合、あなたは誰に対して、法的にどのようなことができるのでしょうか。

 

3.配偶者に対する法的措置

(1)離婚できる?

風俗通いをしている配偶者に嫌気がさしたあなたは、その配偶者と離婚することができるのでしょうか。

(2)離婚事由とは?

あなたと配偶者が話し合い、離婚をすることに合意ができたのであれば、あなたは配偶者と離婚をすることができます。

一方、配偶者が「やり直したい」「子供と離れたくない」などと言い、話し合いによる解決ができない場合、「離婚事由」(民法770条1項1号〜5号)が必要になります。

この「離婚事由」に該当する事実があれば、話し合いによる解決ができない場合でも、裁判で離婚を求めることができます。

(3)不貞行為にあたる?

「離婚事由」の一つとして、民法770条1項1号は「配偶者に不貞な行為があったとき」と規定しています。

ここでいう「不貞な行為」とは、性交類似行為は含まず、性交と考えるのが一般的と考えられています。

配偶者が風俗店で性交をしていた場合は、この「不貞な行為」に該当しますので、離婚事由があるということができます。ただし、離婚事由があっても離婚が認められるとは限らず、各種事情を考慮して裁判所の裁量で離婚請求を認めないこともあります(裁量棄却といいます。)。そのため、1回のみの不貞行為では離婚を認めなかった裁判例もあり、ある程度継続的に不貞行為を行っていないと離婚を認めてもらえない可能性があります。また、時期が昔だと離婚が認められにくくなります。風俗店での性交は一般的な不倫よりも配偶者の精神的苦痛が小さいと判断されてより判断がシビアになるおそれもあり、その回数や時期等によっては、離婚が認められるとは限りません。

また、風俗店と言っても、性交を伴う店は基本的にはソープランドだけであり、性交を伴わず性交類似行為にとどまる店や、ストリップ劇場のようにただ鑑賞するだけの店もあり、提供するサービスは店により様々です。そのため、性交を伴うサービスを提供していることが明らかな風俗店(一般的にはソープランドがこれに当たり、ヘルス等はこれに当たりません。)に配偶者が通っている証拠がある場合を除き、風俗店に行ったからといって必ず「性交」しているわけではありませんので、風俗店の利用=民法770条1項1号の「不貞な行為」がある、と必ずしも言えるわけではありません。

(4)その他婚姻を継続し難い重大な事由

一方、民法770条1項5号は、離婚事由として「その他婚姻を継続し難い重大な事由」と規定しています。

この規定は、様々な事実・理由があり、夫婦の婚姻関係が破綻している場合には、離婚を請求できるという意味です。こちらの規定を用いて離婚を求める場合には、婚姻関係の破綻を示す様々な具体的事実を指摘し、それらの事実を総合して婚姻関係が「破綻」していると主張することになります。

上記の通り、風俗店の利用は必ずしも「不貞な行為」になるわけではありませんが、たとえば風俗店にハマって家庭を顧みず、何度話し合っても変わらないという事実は、夫婦関係の破綻を示す事実のうちの一つとして主張でき、その結果、離婚が認められる可能性があります。

(5)裁判例

東京地方裁判所平成16年6月17日判決は、風俗店に入り浸って家庭を顧みなかった夫に対して、妻が離婚請求を行った事案です。

裁判所は、夫が風俗店に入り浸っていた事実を指摘し、婚姻関係の破綻を認め、妻からの離婚請求を認めました。ただし、この裁判例は、風俗店の継続利用の他にも夫が夫婦共通財産である貯金を勝手に使い込んだこと、夫が家に全く寄り付かなくなった事実などを指摘し,離婚を認めるにあたっての判断要素としています。

 

一方、横浜家庭裁判所平成31年3月27日判決は、デリバリーヘルス店を利用していた夫に対して、妻が離婚を請求したものの認められなかった事案です。

裁判所は、夫がデリバリーヘルス店を利用していた事実を認めつつも、夫が関係修復に向けて誠実な対応をとっていた事実などをふまえて、関係修復の余地は十分あるとして離婚請求を認めませんでした。

 

以上のように、風俗店を利用していたという事実は、離婚請求の際に一つの事情として考慮されうることは間違いありません。しかしながら、風俗店を利用していたという事実があったとしても、必ず離婚請求が認められるわけではありません。離婚請求が認められるかどうかは、風俗店の利用回数や期間、その他の様々な事情も踏まえて、判断されることになります。

(6)風俗店の利用と配偶者に対する離婚慰謝料請求

配偶者が風俗店に通っていたという事実は、離婚慰謝料を請求する場合に、一つの事情として考慮される可能性があります。

例えば、上記の東京地方裁判所平成16年6月17日判決は、「原告と被告の婚姻関係は,完全に破綻するに至ったが,これは,被告が風俗店等に入り浸って家庭を顧みず,一方的に家を出て行ったことによるものであり,その原因は専ら被告にあり,被告は,原告に対し,離婚に伴う慰謝料を支払うべき責めを負うものというべきである。・・・上記慰謝料は500万円をもって相当と認める。」と判示し、妻から夫に対する慰謝料請求を認めました。この事例は夫が風俗店に入り浸って子供のために貯めていた150万円や定期預金550万円を使い果たし、生命保険をも勝手に解約して約100万円の返戻金を受け取った他、一方的に家を出て所在不明となって妻の生活を困窮させるなど大変悪質性が高かったため、非常に高額な慰謝料が認められました。

(7)風俗店の利用と配偶者に対する不貞慰謝料請求

風俗店といっても上記のとおりサービス内容は様々ですが、風俗店で性交を行った配偶者に対して不貞慰謝料をすることは、法的に可能と考えられます。

しかし、配偶者と離婚をせずに慰謝料請求のみを行うというケースは非常にまれであり、現実の事案としては(6)のように、離婚慰謝料請求という形で問題になっています。

また、一般的な不貞行為(不倫)と比べると、風俗の場合には請求したとしても低い金額しか認められないのが通常です。これは、配偶者の受ける精神的苦痛が不倫よりも風俗の方が小さいと考えられているからです。

 

4.風俗店の店員に対する慰謝料請求

(1)慰謝料請求について

配偶者が性交を伴う風俗店に通っていたということは、配偶者と風俗店の店員が性交をしていることになります。

それでは、配偶者ではなく、風俗店の店員に対して慰謝料請求をすることはできるのでしょうか。

(2)裁判例

東京地方裁判所平成26年4月16日は、妻である原告が、夫と肉体関係を持っていたクラブのホステスに対して慰謝料請求を行った事案です。

裁判所は、一般論として、「ソープランドに勤務する女性のような売春婦が対価を得て妻のある顧客と性交渉を行った場合には,当該性交渉は当該顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず,何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから,たとえそれが長年にわたり頻回に行われ,そのことを知った妻が不快感や嫌悪感を抱いて精神的苦痛を受けたとしても,当該妻に対する関係で,不法行為を構成するものではないと解される。」と判示しました。

つまり、この裁判例によると、ソープランドにおける性交渉を担当した風俗嬢は、担当した顧客の妻に対して、慰謝料を支払う義務はないということになります。

 

なお、この裁判例は、「クラブのママないしホステスが,顧客と性交渉を反復・継続したとしても,それが「枕営業」であると認められる場合には,売春婦の場合と同様に,顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず,何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから,そのことを知った妻が精神的苦痛を受けたとしても,当該妻に対する関係で,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。」として、

クラブのホステスが「枕営業」として性行為をしていた場合には、顧客の妻に対して慰謝料を支払う義務はないとしています。

(3)慰謝料請求は難しい

以上の裁判例を踏まえると、風俗店の店員が店の仕事として性行為をした場合には、その店員に対して慰謝料請求することは難しいと考えられます。

なお、仕事ではなくプライベートで性行為に及んでいた場合には、慰謝料請求はできるものと考えられます。

 

5.最後に

以上の通り、あなたの配偶者が風俗店を利用していた場合、あなたの配偶者に対して離婚請求や慰謝料請求をできる可能性はありますが、風俗店の店員に対して慰謝料請求をすることは難しいと考えられます。

あなたがどのような請求を行うとしても、以上のような裁判例などを踏まえ、事案によって適切な対応をおこなう必要がありますので、離婚や慰謝料請求に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

 

横浜シティ法律事務所には、離婚や慰謝料問題に強い弁護士が在籍しています。お悩みの際は、お気軽にご相談ください。

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