不貞相手に請求できるのは慰謝料だけ?
1 はじめに
不貞相手に請求できるものは慰謝料以外にはないのでしょうか。例えば,調査のために探偵費用を支払った場合や,慰謝料を請求するのに弁護士に依頼した場合の費用,精神的ショックによる通院費用など不貞の発覚によりかかる費用には様々なものがあります。
本コラムでは,法律上,不貞相手に対してどのような名目の費用が請求できるか,またいくらまで請求が認められるのかを解説をしていきます。
2 探偵費用
配偶者が不貞をしている可能性がある場合に,探偵(興信所)に依頼をして,ホテルに出入りする写真などの証拠を取得してもらう場合があります。そして,探偵費用については多くの興信所がタイムチャージを採用しており,平均的に1時間あたり1.5万円〜2万円程の料金がかかります。そのため,調査時間にもよりますが,数十万円程度の費用がかかるケースが多いです。
そして,この探偵費用については,請求が認められる場合と認められない場合が存在します。認められる場合とは,一般的に探偵の調査がなければ不貞の事実を明らかにすることができなかったような場合です。逆に言えば,調査をしなくても,LINEのやり取りなど他の証拠から既に不貞の事実が明らかとなっている場合,探偵費用の請求は認められにくくなります。
また,探偵費用の請求が認められる場合にも,基本的にかかった金額全てを請求することは困難です。慰謝料として認められる金額の10%程度(慰謝料が150万円であれば15万円)の範囲のみで請求を認められるケースが多いです。
詳しくはこちらのコラム(不貞の調査費用はすべて相手に請求できるか)に記載されておりますので参照ください。
3 弁護士費用
慰謝料の請求をする場合に,弁護士に依頼をされる方も多くいます。そして,弁護士費用については当然に相手に負担してもらうものだというイメージの方もいると思います。
しかしながら,弁護士費用についても探偵費用と同様に,その全額を相手に請求することはできません。弁護士費用については,訴訟となった場合,慰謝料として認められた金額の10%を弁護士費用とするという考え方が,裁判実務で定着しています。
そのため,探偵費用と異なり,判決となった場合に弁護士費用が1円も認められなくなる可能性はありませんが,慰謝料が150万円であれば,15万円が弁護士費用相当額として認められることになり,それを超えてしまった分については自己負担となってしまいます。
4 治療費
不貞が発覚したことによる精神的ショックで,食欲不振,不眠,鬱などの症状が出てしまうかたもいらっしゃいます。こうした理由で精神科などに通院した場合の治療費などは認められるでしょうか。
結論からいうと,治療費の請求が認められる可能性はあるものの,必ず認められるわけではなく,請求が認められないケースのほうが多いといえます。これは,不貞行為を知ったことで通院が必要になったという因果関係を証明することが難しいからです。精神を病んでしまう理由には,様々な要因が考えられ,本当に不貞発覚が原因で精神状態を壊したのかということを証明するのは,なかなか難しく,裁判所としても治療費との間の因果関係を容易に認めない傾向にあります。
もっとも,通院の事実は慰謝料を計算する際には一つの参考にされますので,もし精神的に失調をきたしているようでしたら通院されることをおすすめいたします。
5 引越し費用
不貞が原因で離婚となり,家を出ていくこととなった場合に,その引越し費用の請求ができるか問題となることがあります。
この点,引越し費用については基本的に請求が認められておらず,訴訟をした場合には請求が棄却されるのが通例です。
6 交渉では慰謝料以外獲得できないことが多い
上記のとおり,裁判で判決となった場合,慰謝料のほかに探偵費用と弁護士費用の一部の請求が認められる可能性があります。もっとも,不貞慰謝料の請求で判決まで進むケースは多くありません。
なぜなら,訴訟に進む前にまず相手と交渉をし,そこで金額がまとまれば示談となりますし,訴訟になった場合でも裁判官から和解の勧告を受けることがあり,多くのケースが和解で終わっているのが実情だからです。
そして,実務上,一般的に交渉段階では探偵費用や弁護士費用を含めた話がされることは少なく,慰謝料のみ金額を決めて和解となるケースが大多数です。また,訴訟となった場合にも,和解をするケースでは探偵費用や弁護士費用まで含めて和解をするケースは多くありません。
そのため,これは当事務所としての肌感覚となりますが,実際に探偵費用や弁護士費用まで含めて慰謝料を支払うというケースは全体の1割あるかないかといったところだと思います。
7 最後に
本コラムでは不貞相手に対し,どのような費用の請求が認められるかについて解説してきました。
横浜シティ法律事務所では不貞問題に関し,経験豊富な弁護士が在籍しております。初回相談は無料でお受けしておりますので,ぜひ一度ご相談ください。
最後までコラムをお読みいただきありがとうございます。当事務所は男女問題に注力し、年間100件を超えるご相談をいただいております。また、当事務所に所属する弁護士3名はいずれも男女問題につき豊富な経験を有しております。
男女問題にお困りの方でご相談を希望される方は、お電話または以下のリンクから初回無料相談をお申し込みください。
その他のコラム
慰謝料請求をするにはどんな証拠が必要なの?
1.はじめに あなたが慰謝料を請求する際に、不倫をした配偶者や不倫相手が不倫の事実を認めているのであれば、あとは金額の交渉や、支払い方法の交渉になることがほとんどです。その場合、不倫の証拠はあまり重要にはなりません。 一方、不倫の事実を認めていない場合には、不倫をした証拠が重要になります。交渉の過程においても、裁判においても、不倫をしたと言えるだけの証拠が必要になります。 2.どのような証拠が使用...
慰謝料請求の期限までに回答ができない場合の対処法
1 はじめに 不貞の事実が発覚し慰謝料請求を受けた場合、通常その通知書には「●月●日までにお支払いください」「●月●日までにご回答ください」といった期限が設けられています。 しかしながら、突如として慰謝料の請求を受けた場合、今後の対応を検討するために弁護士に相談したり、お金を用意したりと、期限までに回答できない、入金が間に合わないという方も少なくありません。 期限までに入金や回答ができない場合どのような不利益があるのか、...
配偶者の不倫が発覚。不倫相手に連絡する際に気を付けることは?
1.不倫相手への連絡 配偶者が不倫をした場合には、不倫相手に対して慰謝料請求をすることが可能です。請求の方法は様々あり、メール、電話、手紙等あるいは直接面会して請求することもあるでしょう。 請求をするには当然何らかの手段で不倫相手に連絡をとる必要がありますが、その際に気を付けることはあるのでしょうか。 2.連絡の内容によっては不法行為になる場合も… 単に慰謝料を支払うように伝えるだけであれば、特段問...
ゴールデンウィーク期間中の営業について(2025年)
横浜シティ法律事務所の令和7年(2025年)のゴールデンウィーク期間中の営業と、ご相談の予約方法について、ご案内いたします。 営業日と休業日 横浜シティ法律事務所は、以下のとおり、暦どおりの営業となります。 4月28日(月) 通常どおり営業 4月29日(火) 休業 4月30日(水) 通常どおり営業 5月1日(木) 通常どおり営業 5月2日(金) 通常どおり営業 5月3...
不貞相手に請求できるのは慰謝料だけ?
1 はじめに 不貞相手に請求できるものは慰謝料以外にはないのでしょうか。例えば,調査のために探偵費用を支払った場合や,慰謝料を請求するのに弁護士に依頼した場合の費用,精神的ショックによる通院費用など不貞の発覚によりかかる費用には様々なものがあります。 本コラムでは,法律上,不貞相手に対してどのような名目の費用が請求できるか,またいくらまで請求が認められるのかを解説をしていきます。 2 探偵費用 ...





