配偶者の不倫が発覚。不倫相手に連絡する際に気を付けることは?
1.不倫相手への連絡
配偶者が不倫をした場合には、不倫相手に対して慰謝料請求をすることが可能です。請求の方法は様々あり、メール、電話、手紙等あるいは直接面会して請求することもあるでしょう。
請求をするには当然何らかの手段で不倫相手に連絡をとる必要がありますが、その際に気を付けることはあるのでしょうか。
2.連絡の内容によっては不法行為になる場合も…
単に慰謝料を支払うように伝えるだけであれば、特段問題は生じにくいです。
しかし、不倫をされたという事実から怒りが収まらず、不倫相手に対して感情的な言葉をぶつけたくなることもあるでしょう。
その場合、勢いのままに不倫相手にその気持ちをぶつけてしまってもよいのでしょうか。
実は、不倫相手に連絡をしたところ、逆にこちらが不倫相手に訴えられてしまうことがあります。
裁判例の中には、実際に不倫相手にメールを送ったところ、不法行為と認定された例がありますので、ご紹介します。
3.裁判例の紹介
(1)事案の概要
東京地方裁判所平成29年4月27日判決は、妻の不倫相手に慰謝料請求をしようとした夫が、不倫相手に対して大量のメール送信などをしており、不倫相手(原告)が夫(被告)に対して、それらの行為が不法行為に当たるとして損害賠償を求めた事件でした。
(2)事実関係
夫は不倫相手に対し、不倫相手と妻が不貞関係に及んでいることを前提として、少なくとも98通のメールを送信しており、その中には、以下のような内容や、不倫相手の知り合いや娘について触れるものがありました。
「不倫で失うモノ あなた達優秀だから一般論わかるよね 家族を失う 仲間を失う 仕事を失う 娘さん、立派なのにかわいそうですね うちの3姉妹の物語を、泥だらけに汚物まみれにしたんだから 同じように、させていただきます」
「これ、仲間の仕事も失うのかな まず始めに まとめサイト作って、スキャンダらすうーに片っ端しからやってくかな」(原文ママ)
(3)裁判所の判断
以上の事実などを前提に、裁判所は次のような判断をし、不法行為が成立するとして、15万円の慰謝料を認めました。
「メールの送信回数は、短期間に極めて頻回にわたるものであり、その内容も、原告の娘の生活の平穏を脅かすかのような文言を伴うものであって、社会的相当性を逸脱しているというほかはない」
「原告に対して、精神的苦痛を与えることをも目的としていたというのが相当である」
(4)解説
この事件で裁判所は、社会的相当性を逸脱しているとして不法行為の成立を認めています。不倫事件の性質上、感情的になってしまうことはある程度は理解できるものの、夫は不倫相手の娘に言及するような内容のメールも送っています。不倫とは直接関係のない不倫相手の娘の生活の平穏を脅かすような内容のものもあり、感情的になってしまうのは仕方がないとしても、やはり度が過ぎており、社会的相当性を逸脱しているという判断なのでしょう。
なお、この事件では証拠不足で原告の不倫の事実が認定されませんでした。
不倫が認定されるだけの証拠もなくメール送信などを繰り返したことも、裁判所が不法行為の成立を認めた要素になっているようです。
この他にも、不倫相手に対して金銭を要求して交付を受けた行為に、刑事事件として恐喝罪の成立が認められた裁判例も存在します。この事案では不倫の事実が認定されましたが、単に慰謝料を請求するだけにとどまらず、不倫相手に対し、不倫相手の家族や会社に言いふらすことなどを伝えていたようです。
また、紹介した裁判例は、不倫相手だけでなくその家族や周囲の人間にも影響を及ぼしかねない行為態様の事案でした。しかし、周囲に影響を及ぼさないまでも、怒りにまかせた強い言葉で不倫相手に金銭を要求すれば、その行為自体に不法行為が成立する可能性があります。
4.まずは弁護士にご相談を
以上のとおり、慰謝料請求するためには不倫相手と直接連絡をとる必要がありますが、その内容によっては不法行為となってしまい、逆に損害賠償を請求されてしまう可能性まであります。
それまで平穏な夫婦関係を構築していたのであればなおさら、不倫相手に対して怒りの感情が大きくなることは自然なことです。悪意無く強い言葉を使ってしまうこともあるでしょう。
しかし、慰謝料の請求は法律的な問題が多分に含まれているもので、感情だけで動くのではなく、適切な法的主張をする必要があります。
また、勢いに任せてしまうと適切な証拠集めができなくなる可能性や、紹介した裁判例のように、逆に損害賠償請求をされるという事態になりかねません。
弁護士に依頼することで、そのような危険性を排除し、冷静な判断と、適切な慰謝料請求をすることが可能になります。
横浜シティ法律事務所では、不倫問題に精通した弁護士がご相談をお受けさせていただきます。
不倫が発覚した際には、まずは当事務所にご相談ください。
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