不貞相手の住所や連絡先を調べたい!弁護士会照会制度とは?
1 はじめに
不貞慰謝料を請求する際に、相手の名前がわからない、相手がどこに住んでいるのかがわからないなど、慰謝料を請求するために必要な情報がわからないケースは少なくありません。
このような場合に相手の情報を調べるための1つの有力な手段となるのが弁護士会照会という制度です。
本コラムでは、弁護士会照会制度の大まかな内容を説明した上で、具体的にどのような調査が可能なのか、利用できないのはどのような場合かといったことについて解説をしていきます。
2 弁護士会照会制度の概要
弁護士会照会の制度は弁護士法23条の2に定められた制度であり、23条照会とも呼ばれています。弁護士法23条の2は、弁護士が所属する弁護士会(東京弁護士会、神奈川県弁護士会など各都道府県に設置されています)に対して申し出をし、これを受けて弁護士会が公務所や会社などに対して必要な事項の報告を求めることができることを定めています。
また、弁護士会から照会を受けた会社などは、照会事項に対して回答をする法的な義務があるとされており、原則としてこれに回答をしなければなりません。そのため、多くの公務所や会社などが弁護士会照会に応じており(平成29年の報告拒否は3.9%、無視は9.4%にとどまり、9割近くが回答を受けられています)、平成29年には年間で21万件以上の利用があるなど、年々その利用は拡大しています。
同制度を利用することで、個人が回答を求めても教えてもらえない情報などにつき、弁護士会を通じて照会をかけ情報を取得する事が可能となっています。
3 どのような調査が可能か
弁護士会照会を通じて具体的にどのような調査が可能となるか、不貞慰謝料請求の際によく利用されるいくつかの具体例を以下では照会します。
(1)携帯電話の契約者情報の照会
不貞相手の携帯のメールアドレスや電話番号が分かる場合、そのキャリアの会社(au、ソフトバンク、ドコモなど)に照会をかけることで、そのアドレスや電話番号の契約者の名前・契約時の住所・利用開始日などを調べることが可能です。電話番号はわかるけど名前や住所がわからないといった場合に有効な手段となります。
(2)自動車の登録事項の照会
不貞に利用された車のナンバープレートの情報などが分かる場合、自動車検査登録事務所に対して照会をかけることで、車の所有者や使用者の氏名・住所などの情報を調べることが可能となります。
(3)ICカード乗車券の利用履歴の照会
配偶者のICカードの番号などの情報が分かる場合には、配偶者の行動履歴を確認するために鉄道会社に対して一定の期間のICカードの利用履歴を調べることが有効となる場合があります。ICカードの履歴から不貞相手の住む駅の利用などが認められれば、不貞を推認させる一つの事情となります。
(4)ホテルに対する宿泊者情報の照会
宿泊施設では旅館業法6条により宿泊者名簿の備え付けが義務付けされています。そのため宿泊者に関する情報をホテルなどに照会するという方法が考えられます。もっとも、宿泊者に関する情報はプライバシー性が高く、回答を拒否されることも多いため必ずしも有効な方法ではありません。同伴者の名前などを照会するのではなく、宿泊した人数などだけを照会するほうがまだ回答を受けられる可能性は高くなります。
宿泊をした日付などがわかっているものの、1人で泊まったと虚偽の事実を相手が述べている場合などに利用を検討しても良いかもしれません。
(5)銀行に対する預貯金の照会
不貞の調査とは異なりますが、不貞慰謝料請求の訴訟で判決を得た場合などに相手方が支払いに応じない場合、相手方の銀行口座の預貯金残高などについて照会をかけることができ、預貯金がある場合にはそこに差押をかけることが可能となります。
相手が慰謝料を支払わない場合の強制執行については、こちらのコラム(不動産,給与,預貯金,動産の差し押さえ)を参照ください。
4 弁護士会照会を利用するための条件
弁護士会照会を利用するためには、まず弁護士が事件を受任していることが必要です。不貞相手の情報取得のため、弁護士会照会による調査のみを依頼することはできません。そのため、慰謝料請求などを弁護士に委任していることが利用するための条件となります。
また、弁護士会照会では、その内容が第三者のプライバシーを侵害する可能性があることから必要性・相当性に関する調査も行われます。なぜ、その情報を取得する必要があるのか、事件処理のためにその情報は重要なのかといったことが審査されるため、照会の必要性・相当性に関する事情を事前に検討することが重要です。また、回答を求める場合にも必要な範囲での回答のみを求めることが大切です。
5 最後に
本コラムでは弁護士会照会の制度の仕組みと実際にどのようなことができるのか、そのための条件等について解説をしてきました。不貞慰謝料請求を検討しているものの、証拠が足りない場合などには一度同制度の利用を検討されることをおすすめいたします。
横浜シティ法律事務所では不貞慰謝料請求について経験豊富な弁護士が在籍しております。初回のご相談は無料でお受けしておりますので,慰謝料請求を検討中の場合にはまず一度ご相談ください。
最後までコラムをお読みいただきありがとうございます。当事務所は男女問題に注力し、年間100件を超えるご相談をいただいております。また、当事務所に所属する弁護士3名はいずれも男女問題につき豊富な経験を有しております。
男女問題にお困りの方でご相談を希望される方は、お電話または以下のリンクから初回無料相談をお申し込みください。
その他のコラム
慰謝料を分割で払うことはできるか?
1.慰謝料は一括でなければダメ? 不倫の事実が発覚してしまい慰謝料を支払うこととなった場合,人によってはまとまったお金を一括で用意できないこともあるでしょう。特に不倫の慰謝料は高いケースで300万円を超えることもあり,これだけのお金を一度に支払うことができない人も多いと思います。 このような場合,費用を分割で払うことはできるのか,またその場合,どの程度の分割に応じてもらえるのでしょうか。 2.慰謝料は原則として一括で支払...
不倫したら親権は取れない?
1 はじめに 結論から言うと,不倫が原因で離婚になったとしても,親権が取れなくなるわけではありません。 ただし,一定の場合には不利な事情になることもあります。 今回のコラムでは,不倫と親権の関係について,不倫問題や離婚問題に詳しい横浜シティ法律事務所の弁護士が解説いたします。 2 親権とは まず親権とは何かということを最初にお話しします。 ※親権の内容について既にご存知の方は,この項を読み飛ばしていただいて構い...
夫婦仲が悪い・離婚を考えていると聞いて不倫、慰謝料は発生する?
1.はじめに 不倫相手が既婚者であることを知りつつも,「もう離婚を考えている」などという話を信じて不倫してしまう方も少なくありません。 相手家族にはもう夫婦としての関係性がないと信じて不倫をした場合,それでも慰謝料を払わなければならないのでしょうか? 2.婚姻関係破綻後の不倫については慰謝料が発生しない なぜ不倫をした場合に慰謝料の支払い義務が生じるかを簡単にというと,夫婦には夫婦生活の平和の維持を...
配偶者の不倫が発覚。不倫相手に連絡する際に気を付けることは?
1.不倫相手への連絡 配偶者が不倫をした場合には、不倫相手に対して慰謝料請求をすることが可能です。請求の方法は様々あり、メール、電話、手紙等あるいは直接面会して請求することもあるでしょう。 請求をするには当然何らかの手段で不倫相手に連絡をとる必要がありますが、その際に気を付けることはあるのでしょうか。 2.連絡の内容によっては不法行為になる場合も… 単に慰謝料を支払うように伝えるだけであれば、特段問...
不倫のせいで別居・離婚になっても,面会交流はできる?
1 面会交流とは? 面会交流とは,離婚に際して親権者とならなかった親が,子供と会ったり,文通したり,電話したりして交流することをいいます。最近では,メールやライン,写真や動画の送付といった交流のかたちも増えております。 また,離婚をしておらず,夫婦が別居している場合に,子供と一緒に暮らしていない親が,子供と会ったりすることも同様に面会交流といいます。 2 不倫があっても面会交流は求めていいの? ...





