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慰謝料の支払いが遅れた場合に発生する「遅延損害金」とは

1 はじめに

不貞(不倫)が発覚して慰謝料を請求して示談をしたのに,慰謝料の支払いが遅れた場合,ペナルティがあるのでしょうか。
今回のコラムでは,示談をしたのに慰謝料を支払うのが遅れてしまった場合にどのようなペナルティがあるのかについて,横浜シティ法律事務所の弁護士が解説いたします。

 

2 慰謝料の支払いが遅れた場合のペナルティ

(1)遅延損害金とは

慰謝料の支払いが遅れた場合のペナルティですが,示談の際に慰謝料の支払期日を定めた場合,その期日に遅れると遅延損害金が発生いたします。
遅延損害金とは,債務不履行に基づく損害賠償金です。平たく言えば,約束の違反によって被った不利益を償ってもらうためのお金です。

(2)どのような場合に遅延損害金が発生するのか

支払期日に1日でも遅れれば,遅延損害金が発生します。

 

3 遅延損害金はどうやって決めるのか

(1)遅延損害金の決め方

遅延損害金は示談書の中に記載して,取り決めることができます。たとえば,示談書の中で遅延損害金を年5%と定めていたとすると,100万円の慰謝料の場合,1年間遅延すれば,5万円の遅延損害金が発生します。
なお,示談書に遅延損害金に関する項目がなければ,遅延損害金を請求できないというわけではありません。民法には法定利率というものが定められており,当事者間で遅延損害金の取り決めをしていない場合には,この法定利率が適用されます。法定利率については,(3)で詳しく解説します。
※法律に定められている利率を「法定利率」というのに対し,当事者間で取り決めた利率のことを「約定利率」といいます。法定利率より高い約定利率を定めた場合は,法定利率ではなく,約定利率が適用されます(民法419条1項)。

(2)遅延損害金の上限

当事者間で遅延損害金を定めるとき,何%にしたらよいか悩まれると思います。利息制限法や消費者契約法等の法律による制限があるのではないかと考える方もいらっしゃるでしょう。
実は,慰謝料の遅延損害金を定めるにあたって,明確な法律上の上限はありません。利息制限法は金銭の貸し借りについて規制する法律ですし,消費者契約法は事業者と消費者との間の契約について規制する法律であるため,個人間の慰謝料の示談については適用されません。
とはいえ,あまりに高い遅延損害金を定めると,公序良俗違反とされて無効になってしまう可能性があります(民法90条)。当事者間の遅延損害金の取り決め(約定利率)が無効と判断された場合は,法定利率が適用されることになります。
では,具体的には何%だと公序良俗違反で無効とされるのでしょうか。これは一律に決まっているわけではなく,その都度事情に応じて判断されることになります。
しかし,一定の目安はあります。消費者契約法の定める上限14.6%以内であれば,公序良俗違反とされることはないでしょう(実際,14.6%と定めている例はよく見ます)。
他方,利息制限法の上限を超える遅延損害金を定めた場合は,公序良俗違反とされるリスクがあります。
利息制限法の範囲は以下のとおりです。たとえば,150万円の慰謝料の遅延損害金を定める場合,年21.9%の範囲を超える遅延損害金は定めない方がよいでしょう。
・元本が10万円未満の場合,年29.2%
・元本が10万以上100万円未満の場合,年26.28%
・元本が100万円以上の場合:年21.9%

(3)法定利率とは

前述のとおり,示談の際に遅延損害金に関する取り決めをしていなかった場合や,取り決めた遅延損害金が高すぎて無効と判断された場合には,法定利率が適用されます。
現在の法定利率は,2020年4月の民法改正によって,年3%とされました(民法404条2項)。たとえば,100万円の慰謝料の場合,1年間遅延すれば,3万円の遅延損害金が発生します。
この3%の法定利率ですが,3年ごとに見直されることになっております(民法404条3項)つまり,変動金利制ということです。具体的には,日銀が公表する貸付金利の過去5年間の平均が1%以上変動すれば,1%単位で変動します(1%単位でしか変わらないため,貸付金利の平均が0.9%の変動であった場合,3%のままです)。
なお,将来法定利率に変動があったとしても,最初に遅延損害金が発生した時点の法定利率でその後も固定されることになります。たとえば,2021年から遅延し,2023年に法定利率が4%に変更になったとしても,2021年時点の3%の法定利率がそのまま適用されます(民法404条1項)。

(4)民法改正前の法定利率が適用される場合

2020年の民法改正前の法定利率は年5%でした(旧民法404条)。
改正民法の施行日である2020年4月1日より前から遅延が発生していた場合,法定利率は改正前の5%が適用されます。また,利率は,最初に遅延損害金が発生した時点で固定されます(民法419条1項)。たとえば,2020年1月から2020年12月までの1年間遅延した場合,1年間すべての期間について年5%の法定利率が適用されます。

(5)なぜ法定利率が改正されたのか

なぜ3%に引き下げられたのかというと,旧民法の法定利率が決められたのは明治時代のことであり,現代(低金利時代)の市中金利と大きく乖離してしまっていたからです。

 

4 おわりに

以上のとおり,慰謝料の支払いが遅延した場合には,遅延損害金が発生いたします。
慰謝料が約束どおり支払われずお困りの方や,慰謝料の支払いに強制力を持たせるために遅延損害金も定めておきたいという方は,不倫問題に詳しい弁護士にご相談ください。

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