不貞の調査費用はすべて相手に請求できるか
1 はじめに
不貞慰謝料請求をする上で重要となるのが、不貞の証拠です。
そして、不貞の証拠として有力なものの1つに探偵(興信所)が取得した報告書というものがあります。
これは、不貞相手と配偶者がホテルや相手の家に入るところ・出るところを写真に収めたものです。特にホテルへの宿泊では、不貞があったことを推認させる強い証拠となります。
もっとも探偵に調査を依頼した場合、その調査費用はどうなるのでしょうか。本コラムでは、探偵の調査費用を不貞相手に負担させることができるのか、解説をしていきます。
2 調査費用の金額
調査費用については業者ごとに料金を定めており、料金も大きく異なってきます。
もっとも多くの業者はタイムチャージのシステムを採用しており、調査の日数が増えればその分料金も高額になるようです。
そして、平均的に1時間あたり1.5万円〜2万円程度の料金を採用している業者が多く、数日間の調査を依頼する場合には、少なくとも数十万円程度はかかってしまうようです。
当事務所に来られる相談者の方の中には百万円を超える調査費用を支払われている方も少なからずいらっしゃいます。
3 調査費用に関する裁判例の判断
(1)裁判例
不貞の慰謝料のほかに、調査費用が認められるかについて、多くの裁判例が判断を出しています。
裁判例の中には調査費用を一切認めないものもあれば、調査費用を認めるものもありケースによって判断が分かれています。
例えば以下のようなケースがあります。
ア 東京地裁平成22年7月28日のケース
このケースでは、調査費用として支払った金額が20万円弱と比較的低額であった こと、調査がなければ不貞を立証することは事実上不可能であったことなどから調査費用の全額について、請求を認めました。
イ 東京地裁平成22年2月23日のケース
このケースでは、原告が100万円の調査費用を負担しており、その支払を被告に求 めていました。この点、裁判所は不貞相手である被告が当初より不貞の事実を認めていたため、調査の結果が訴訟による不貞の立証に寄与した程度が低いとして調査費用の支払いを一切認めませんでした。
(2)考慮要素
上記のように事例ごとに裁判所の判断は分かれています。もっとも多くの裁判例を見る中で調査費用が認められるかどうかの判断にあたっては、概ね次のような事情が考慮されています。
①調査がなければ不貞の事実を立証することができなかったかどうか
②調査費用が相当な金額かどうか
③調査の内容が不貞を立証するのに必要なものか
例えば、調査の前から既に配偶者や不貞相手が不貞の事実を認めていた場合や、SNSのやり取りから不貞があったことが明らかであった場合などには、それに加えて調査をすることの必要性は乏しくなります。
また、調査費用について100万円を超えるような高額な支出がされたような場合、その全額を相当な費用として認めることは難しいようです。
これに加えて、不貞の事実に関係のない単なる食事の現場を取っただけの調査や職場を突き止めるための身辺調査のようなものについては、調査費用として認められなくなる可能性が高くなります。
(3)小括
上記のとおり、様々な要素を考慮して調査費用が認められるかどうかは判断されます。
もっとも、経験上、多くのケースで調査費用全額が認められることは難しく、不貞による慰謝料金額の10%(慰謝料が150万円であれば15万円)程度しか認められないケースが多いように感じます。
4 探偵に依頼する前に相談を
既に述べてきたように,調査費用は高額になることが多く,また,必ずしも相手に全額を請求できるものではありません。
そのため,事前に弁護士に相談をした上で,今持っている証拠だけで不貞を証明できないか,探偵をつけるとしてどこまでの調査が必要か,などの打ち合わせをすることが望ましいです。
横浜シティ法律事務所では、不貞慰謝料請求に関し経験豊富な弁護士が在籍しております。
初回のご相談は無料でお受けしておりますので、探偵への依頼をお考えの場合には、まずは一度ご相談ください。
最後までコラムをお読みいただきありがとうございます。当事務所は男女問題に注力し、年間100件を超えるご相談をいただいております。また、当事務所に所属する弁護士3名はいずれも男女問題につき豊富な経験を有しております。
男女問題にお困りの方でご相談を希望される方は、お電話または以下のリンクから初回無料相談をお申し込みください。
その他のコラム
不倫の違約金の相場と違約金条項の有効性について
1 はじめに 不倫が発覚した場合に、配偶者と不倫相手が再び不倫や接触をした場合にその違約金を定めることがあります。このように違約金を定める場合、金額は自由に設定して問題ないのでしょうか。また、一度違約金を設定し、その後約束違反をしてしまった場合、定めた違約金の全額を支払わなければならないのでしょうか。 本コラムでは違約金の相場や有効性について横浜シティ法律事務所の弁護士が解説いたします。 2 違約金と...
事実婚の夫・妻が不倫をしたとき、慰謝料はとれるの?
1.はじめに 近年、事実婚がますます増加しています。2010年の国勢調査においては、事実婚の件数は約60万件という数字が出ており、その数はさらに増加傾向にあります。 このように事実婚が増加する中で、事実婚という状態が婚姻した夫婦同様に保護されるのかが問題となっています。婚姻をした夫婦の場合には,配偶者が不貞をした場合に慰謝料請求が可能ですが、これは事実婚の場合にも当てはまるのでしょうか。 2.内縁...
不貞相手の住所や連絡先を調べたい!弁護士会照会制度とは?
1 はじめに 不貞慰謝料を請求する際に、相手の名前がわからない、相手がどこに住んでいるのかがわからないなど、慰謝料を請求するために必要な情報がわからないケースは少なくありません。 このような場合に相手の情報を調べるための1つの有力な手段となるのが弁護士会照会という制度です。 本コラムでは、弁護士会照会制度の大まかな内容を説明した上で、具体的にどのような調査が可能なのか、利用できないのはどのような場合かといったこと...
不貞相手から貞操権侵害を主張されたらどうする?
1 はじめに 女性から突然「結婚を前提に付き合ってほしいと言われたから交際していたのに,既婚者だったと知りました。既婚者だと知っていたら交際していなかった。私を騙したことについて慰謝料を請求します。」という手紙が自宅に届いて,夫が浮気していたことを知ったというご相談を受けることがあります。 また,夫の不貞相手に慰謝料請求をしたら,不貞相手から「私は彼から独身だと聞いていた。慰謝料を請求されて初めて既婚者だと知った。私は...
慰謝料請求された 払ってしまえばそれで解決?
1 はじめに 不倫の事実が発覚し,慰謝料請求を受けた場合,早く終わらせたいとの思いから相手の請求した金額をそのまま払ってしまう人も少なくありません。しかしながら、請求された金額を払うだけですべての問題を解決したといえるでしょうか。 今回のコラムでは不貞慰謝料の請求を受けた場合に、請求された金額をそのまま支払ってしまうことの問題点及びトラブルを防止するための慰謝料の支払い方について、横浜シティ法律事務所の弁護士が解説いたしま...





