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相談する弁護士によって慰謝料額の見通しが違うのはなぜ?

1 はじめに

当事務所では不貞慰謝料請求についてたくさんの相談を受けていますが,その中で皆様からよくされる相談が,弁護士によって言っていることが違うので何を信じていいかわからないというものです。
例えば慰謝料の金額はいくらが妥当かという質問に対して,100万円が妥当という弁護士もいれば,150万円が妥当という弁護士もいるというのです。なぜ弁護士によって話す内容が異なるのでしょうか。
本コラムでは,なぜ弁護士によって話すことが異なるのか,また,弁護士に依頼をする場合,どのような観点で弁護士を選ぶといいのかといったことについて解説していきます。

2 慰謝料は誰が決める?

そもそも慰謝料の金額は誰が決めるのでしょうか。まずはそこを理解することが大事なポイントになります。

(1)法律で決まっている?

法律で慰謝料の計算方法が決まっていれば,わかりやすいですし,弁護士によって意見が異なることもありませんよね。しかしながら、実際には法律は細かい慰謝料の決め方を定めているわけではありません。例えば不法行為に基づく損害賠償請求権を定めている民法709条は次のような条文になっています。

(第709条)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

かなり抽象的でわかりにくいですよね。なぜこのような規定になっているかというと,法律は世の中で起きる様々なことに対応できるように作られているからです。例えば,人に殴られた場合の慰謝料の請求も,交通事故による慰謝料の請求も,お金を盗まれた場合の慰謝料の請求も全て同じ条文で処理されます。人に殴られた場合だけに限っても、怪我の大きさやなぜ殴られたのかという理由など、事案はまちまちですよね。だから法律は具体的な慰謝料の決め方については定めず、ただ、「怪我をさせたら賠償しなければならない」といったレベルでしか決められていないのです。

(2)当事者同士で決める?

法律で決まっていないのであれば、次に当事者同士の話し合いでの解決するということが考えられます。例えば当事者が話しあって、今回の件は慰謝料50万円にしようと決めれば、それで解決となります。

このように当事者同士で話し合いができる場合には、基本的には当事者の意志が尊重され、どちらか片方が脅されていたり、法外な慰謝料(例えば不倫の慰謝料5000万円等)でない限り、2人が決めた金額が慰謝料の額となります。

(3)当事者同士で合意ができない場合には?

話し合いで解決ができない場合、最終的には裁判所に判断をしてもらうことになります。裁判所は、もちろん法律に従って判断をしますが、既に述べたとおり法律で慰謝料の決め方は定められていません。そこで裁判官は、慰謝料を決める際に過去の裁判例・判例を参考にします。

裁判所では過去に多くの判決が出されており、こういう事情のケースでは慰謝料が300万円と判断されたとか、このケースでは50万円しか認められなかったとか様々な裁判例が蓄積されています。こうした過去の判断の蓄積によって、大まかな相場というものが形成されているのです。

そのため、不倫慰謝料の判断をする際にも、どういう事情が慰謝料の金額に影響するかといったことはある程度類型化されており(詳しくは 不倫慰謝料はいくら請求できる? を参照ください)、過去の裁判例を参照しながら裁判官は金額を決めることになるのです。

しかしながら、過去に様々な事案が蓄積されているといっても、全く事案が同じケースは一つとして存在しません。不倫の期間が違うこともあれば、会っていた回数や場所、結婚してからの年数、子供の有無など、一つ一つのケースで細かい事情は必ず異なります。また、それぞれの裁判官は判断を下すのに独自の裁量を持っていて、過去のケースと必ず同じ判断をしなければならないわけではありません。

そのため、大まかな相場はあるものの、裁判官によっても判断にずれが生じることはあり、例えば慰謝料を多く認める裁判官もいれば、慰謝料を少なめに認める裁判官もいるのです。あくまでも例えですが大まかな相場として100万円〜150万円といった金額があり、その中で裁判官の裁量に基づいた判断でいくらになるかが決まるといったイメージです。

 

3 弁護士は裁判になった場合の見通しを考えて説明をしている

上記のように、慰謝料については最終的に裁判所(裁判官)が決めることとなるため、慰謝料がいくらになるかは最終的な判断を待たないとわからないという現実があります。そこで弁護士は大まかな相場の中で裁判官によって金額が変わることを理解した上で、大体慰謝料としてはこれくらいになるでしょうという予測を説明するのです。

このように法律で慰謝料が決まっているわけでなければ、裁判官によっても判断が変わるため、弁護士としても大まかな数字を伝えざるを得ず、その結果、弁護士毎にも慰謝料金額の見解にずれが生じることがあるのです。また、過去にあまり例がない珍しい事案などでは、そもそも見通しを立てる事自体が難しいケースもあり、そうなると弁護士の経験などによっても見解が異なることはあります。

 

4 弁護士をどのように判断すればいいか

ここまで弁護士によってなぜ話す内容が異なるのかを説明してきました。しかし、結局弁護士ごとに話す内容が違っている場合、どの弁護士の言うことを信じればいいのか、どの弁護士に依頼をすればいいのか困ってしまう方が多いと思います。弁護士でさえ見解に相違があるのに、どの弁護士が言っていることが一番妥当なのかを相談者の方が判断することほど難しいことはありません。

そこで、ご自身の中で弁護士に依頼することを決めている場合、何を重視するのかを予め考えておくことが良いと思います。裁判になると1年以上の期間がかかることも多く、弁護士とのやり取りなども多く必要になります。そうしたときに自分と合わない性格の弁護士に依頼をすることは、場合によっては大きなストレスになってしまうこともあるかもしれません。そこで、話をしてみて一番性格が合いそうだと思った弁護士に頼むというのも一つの良い選択だと思います。

また、他の弁護士と言っていることが違う場合に、他の事務所ではこのように説明されたんですけれども、その点どうですかと素直に聞いてみるのも良いと思います。丁寧な弁護士であれば、意見に違いが出る理由や自分がそう考える理由・根拠を説明してくれるでしょう。

いくつかの法律事務所をまわって自分に合いそうな弁護士を探すということは悪いことではありません。特に無料相談が増えている現在は、複数の事務所に相談をする方も少なくありません。

 

5 まとめ

以上のとおり、慰謝料請求は弁護士ごとに見解やお伝えする内容に差が出ることもあり、どのように選べばよいのかはなかなか難しい問題だと思います。もっとも、依頼を検討されているのでしたら、ご自身が何を一番大事にしたいのかを考えることが重要でしょう。

横浜シティ法律事務所では不倫問題に関し,経験豊富な弁護士が在籍しております。初回相談は無料でお受けしておりますので,ぜひ一度ご相談ください。

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