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不貞行為の「遅延損害金」はいつから発生する?

1 はじめに

慰謝料を支払わない場合,本来の慰謝料の他に遅延損害金が発生します。

遅延損害金については,こちらのコラム【慰謝料の支払いが遅れた場合に発生する「遅延損害金」とは】でも解説しておりますが,今回は遅延損害金がいつから発生するのか(遅延損害金の起算日)について,横浜シティ法律事務所の弁護士が詳しく解説いたします。

 

 

2 遅延損害金はどういうときに発生する?

(1)示談後の遅延損害金

示談が成立した後,示談書に記載された支払期日になっても慰謝料が支払われない場合,遅延損害金が発生します。

この場合,遅延損害金は支払期日の翌日から発生します。

たとえば,令和3年12月31日までに不貞慰謝料を支払うという約束だったのに支払われなかった場合,令和4年1月1日から遅延損害金が発生します。

 

(2)示談する前でも遅延損害金は発生する?

示談の有無に関わらず,遅延損害金は発生します。

示談をする際は,遅延損害金を別途請求せず,慰謝料●万円を支払うといった取り決めだけをするのが一般的ですが,法的には慰謝料とは別に遅延損害金を請求することも可能です。

裁判で慰謝料を請求する場合には,遅延損害金を明確に慰謝料と分けて請求することになります。

では,遅延損害金はいつから発生しているものとして請求するのでしょうか。以下,詳しくご説明いたします。

 

 

3 遅延損害金はいつから発生する?

遅延損害金はいつから発生するかについてですが,不法行為時説と請求時説という考え方があります。

 

(1)不法行為時説

裁判実務上,不貞行為のような不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金の発生時期は,不法行為時であると理解されております。

不法行為時とは具体的にいつのことを指すのかについては,本コラムで後述します。

 

(2)請求時説

これに対して,不法行為時ではなく,損害賠償(慰謝料)を請求した時以降に遅延損害金が発生すると判断した裁判例も過去にはあります。しかし,現在の裁判実務では,不法行為時から遅延損害金が発生するという考え方が通説です。

 

(3)訴状送達の日の翌日として請求することも多い

実際の不貞慰謝料請求訴訟においては,遅延損害金の起算点について,「本訴状の送達の日の翌日」とされていることも多いです。

遅延損害金の起算点という争点を避けたいという意図がある場合は,このようにすることも考えられます。

しかし,訴訟の前に長期間交渉を続けていた等の事情がある場合,遅延損害金もかなりの金額になるケースもありますから,その場合には少々もったいないともいえます(訴状送達の日の翌日から遅延損害金を求める内容の訴状の場合,裁判所はそれ以前の部分の遅延損害金を認めることはありません。これを処分権主義といい,原告が求めていないものについて裁判所は審理しません)。

 

 

4 遅延損害金が発生する不法行為時とはいつのこと?

先程,不法行為時説が通説であると記載しましたが,不法行為時とは具体的にいつのことを指すのか,解説いたします。

 

(1)不貞行為が1回きりの場合

継続的な不倫ではなく,肉体関係を持ったのが1回きりである場合,不貞行為があった日が不法行為時となります。

 

(2)不貞行為が複数回あった場合

では,継続的な不倫で,何度も肉体関係を持っている場合は,不貞行為が始まった時点と終わった時点のどちらが不法行為時になるのでしょうか。

この論点に対する裁判例の判断は分かれております。

たとえば,東京地裁平成30年4月12日は「最初の不貞行為の日」と判示しました。

他方,東京地裁平成29年11月15日は「最終の不法行為のあった日」と判示しており,この考え方を採る裁判例が多い印象です。

 

継続的な不倫の場合,その全体を捉えて不法行為と主張することになるため,私は不貞行為の終了時が不法行為時であると考えるのが理論的には正しいのではないかと考えます。

しかし,上記のように裁判例は分かれておりますから,原告側としては,「最初の不貞行為の日」を起算点とする方が有利になる可能性があるといえるでしょう。また,被告側としては,原告が「最初の不貞行為の日」を起算点として主張してくる場合,「最終の不法行為のあった日」を起算点とすべきであると反論していくことになるでしょう。

 

なお,不倫が継続している途中で婚姻関係が破綻したような場合には,婚姻関係が破綻した時をもって起算点とすることも考えられ,そのように判断した裁判例もあります(東京地裁平成28年7月8日など)。

 

(3)不貞行為が現在も継続している場合

上記のとおり,「最初の不法行為の日」が起算点であるという考え方を採る場合,不倫が現在も続いているとしても,不倫の開始時を遅延損害金の起算点とすればよいことになります。

他方,「最後の不法行為の日」が起算点であるという考え方を採る場合,まだ不法行為が継続しているのですから,口頭弁論終結時(裁判の審理の終了時ということです)が遅延損害金の発生日と考えられます。

 

なお,不倫が継続している途中で婚姻関係が破綻した場合には,婚姻関係破綻時を起算点とすることも考えられます。

 

 

5 慰謝料と一緒に請求する弁護士費用にも遅延損害金は発生する?

訴訟では,慰謝料と一緒に弁護士費用を請求することも多く,裁判実務では慰謝料額の10%相当額を認めております。

この弁護士費用についても,慰謝料と同じ時点から,遅延損害金が発生します。

 

 

6 おわりに

遅延損害金については,不倫慰謝料請求の示談交渉の際には通常請求せず,争点になることもありません。

しかし,訴訟を提起する場合には,いつを起算日として訴状を作成するかを検討する必要があり,理論的には難しい論点でもあります。訴状送達の日の翌日を起算日として請求してしまえばあまり難しいことはないとも言えますが,そうすると原告側としては数万円〜数十万円も損をしてしまうこともあります。

不倫慰謝料(不貞慰謝料)を裁判で請求する場合には,不倫問題に強い弁護士に依頼されることをおすすめいたします。

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