夫婦間で不倫慰謝料を支払う合意は取り消せる? |横浜の弁護士による不倫・慰謝料請求相談なら

不倫の慰謝料請求相談

初回相談1時間無料

045-594-7500

24時間Web予約
受付中

夫婦間で不倫慰謝料を支払う合意は取り消せる?

1 はじめに

配偶者が不貞行為をした場合,法律上の権利に基づいて,配偶者に対し,慰謝料を請求することができます。

そして,一旦交わした合意(契約)は,強迫された場合などを除き,取り消すことができないのが通常です。

しかし,夫婦間の契約については,民法上特殊な規定があります。それは,民法第754条に規定されている夫婦間の契約の取消権というものです。

この条文は,「夫婦間でした契約は,婚姻中,いつでも,夫婦の一方からこれを取り消すことができる。」と規定しております。

 

では,夫婦間で慰謝料請求をして,合意書を取り交わしたり,公正証書を作成したりしても意味がないのでしょうか。

 

今回のコラムでは,夫婦間の契約の取消権(民法754条)について,横浜シティ法律事務所の弁護士が解説いたします。

 

2 夫婦間の契約の取消権(民法754条)はなぜあるのか?

契約をいつでも取り消せるなどと聞くと,そんな馬鹿な法律があるのか!?と思われる方が多いと思います。

なぜこのような法律があるのかというと,夫婦間の問題は国が解決するのではなく,夫婦間で解決すべきものであるという考えからです(「法律は家庭に入らず」という法格言もあります)。

また,夫婦間では一方が他方を精神的に支配していたり,愛に溺れていたりすることも多々あり,真意ではない約束をしてしまいがちであることも立法の理由として挙げられています。

 

3 夫婦間で慰謝料を支払う合意は取り消せるのか?

では,配偶者に不貞行為があり,慰謝料を支払う旨の合意をした場合,その合意は取り消せてしまうのでしょうか。

もしそうだとすれば,それは大変不合理なことになります。

そのため,夫婦間の契約の取消権(民法754条)は,判例上制限がつけられており,夫婦関係が破綻しているときは,契約を取り消すことができないとされております(仮に契約の締結時に婚姻関係が破綻していなくても,その後婚姻関係が破綻したらもう取消権を行使できません。)。

 

つまり,不貞行為があり,夫婦関係が破綻したような場合,慰謝料を支払う旨の合意を取り消すことはできないのです。

また,不貞行為の後一旦夫婦仲が回復したとしても,夫婦関係が良好であるときは取消しを求めて裁判するようなことは通常ないですから,やはり取消権が行使できるタイミングというのは実際上考えにくいでしょう。

 

4 判例の紹介

最高裁判所昭和42年2月2日判決は,「民法754条にいう婚姻中とは,単に形式的に婚姻が継続していることではなく,形式的にも,実質的にもそれが継続していることをいうものと解すべきであるから,婚姻が実質的に破綻している場合には,それが形式的に継続しているとしても,同条の規定により,夫婦間の契約を取り消すことは許されない」と判示しております。

 

5 おわりに

上記のとおり,夫婦関係が破綻している場合には合意を取り消すことはできないため,民法754条は実質的に空文化しております。

ただ,法律専門家でない方が条文だけ見ると誤解を生じかねないため,厄介な条文となっております。

そのため,もし配偶者から民法754条の取消権を主張された場合には,弁護士に相談されることをおすすめいたします。

 

また,民法754条があるからといって合意が必ず取り消せるわけではないため,夫婦間で慰謝料を請求したり,公正証書を作成したりすることはもちろん可能です。

夫婦間のことだからといって口約束だけで済ませたりせず,弁護士に相談しながら合意書を作成することで,契約の有効性を後々争われるというトラブルも予防することができます。

夫婦間で慰謝料の金額の話し合いがついた場合も,きちんとした合意書を交わしておくことをおすすめいたします。

その他のコラム

慰謝料の支払いが遅れた場合に発生する「遅延損害金」とは

1 はじめに 不貞(不倫)が発覚して慰謝料を請求して示談をしたのに,慰謝料の支払いが遅れた場合,ペナルティがあるのでしょうか。 今回のコラムでは,示談をしたのに慰謝料を支払うのが遅れてしまった場合にどのようなペナルティがあるのかについて,横浜シティ法律事務所の弁護士が解説いたします。   2 慰謝料の支払いが遅れた場合のペナルティ (1)遅延損害金とは 慰謝料の支払いが遅れた場合のペナルティですが,示...

詳細を見る

事実婚の夫・妻が不倫をしたとき、慰謝料はとれるの?

1.はじめに 近年、事実婚がますます増加しています。2010年の国勢調査においては、事実婚の件数は約60万件という数字が出ており、その数はさらに増加傾向にあります。 このように事実婚が増加する中で、事実婚という状態が婚姻した夫婦同様に保護されるのかが問題となっています。婚姻をした夫婦の場合には,配偶者が不貞をした場合に慰謝料請求が可能ですが、これは事実婚の場合にも当てはまるのでしょうか。   2.内縁...

詳細を見る

不動産,給与,預貯金,動産の差し押さえ

1 はじめに 判決等で決まった慰謝料や,公正証書で合意した慰謝料について,相手方(債務者)が支払わない場合,慰謝料を回収するために,債権者は強制執行をすることが可能です。 なお,公正証書ではない示談書しか交わしていない場合でも,一旦裁判をして判決等をもらえば強制執行ができるようになります(示談書に問題がなければ,基本的には示談書の内容をもとに判決がされます。)。 一口に強制執行と言っても,複数の方法があります。今回の...

詳細を見る

配偶者の浮気を許していた場合に慰謝料は請求できるか

1 はじめに 夫と喧嘩をした拍子に「あなたとはもう話したくないから,外に女を作るなり勝手にして」と言ってしまったことがある場合,本当に夫が浮気をしてしまったとしても,慰謝料を請求することは最早できないのでしょうか。 また,結婚する際に「私は縛られたくないから,異性との交際を認める書面にサインしてくれたら結婚してもいい」と言われて書面を作成している場合,慰謝料を請求することは認められないのでしょうか。 今回のコラム...

詳細を見る

不貞慰謝料請求で調停を申し立てられたらどうすればいい?

1 はじめに 不貞慰謝料請求(不倫慰謝料請求)では,示談で話がまとまらない場合,一般的には調停ではなく訴訟(裁判)に進みます。 離婚と違って調停前置主義(訴訟の前に調停をしなければならないという法律のルール)はないですし,通常は示談交渉の段階で話し合いはそれなりに尽くされているからです。   そのため,浮気がバレて慰謝料について話し合っていたら調停を申し立てられたという場合,「どうして裁判ではなく...

詳細を見る

慰謝料請求の無料相談のご予約はこちら

60分無料相談実施中!