不倫をした配偶者(有責配偶者)からの離婚請求は認められる?
1 はじめに
配偶者の不貞が発覚した場合に、ご自身から離婚を求める場合のほか、不貞をした配偶者から離婚を求められるケースもよく見られます。このように、不貞をした配偶者から離婚を請求された場合、その請求は認められてしまうのでしょうか。
本コラムでは、不貞をした配偶者からの離婚請求が認められるのかについて解説していきます。
2 そもそも離婚するかどうかは誰が判断する?
離婚をするかどうかは原則として夫婦双方が話し合って決めるものです。夫婦双方が離婚することに納得しているのでしたら、離婚届の提出等、離婚をするのに必要な手続きをすれば離婚をすることは可能です。
一方で、夫婦双方の離婚に関する意見が違う場合、すなわち片方が離婚を望んでおり、もう片方が離婚を望んでいない場合には話し合いでの解決が困難となります。この場合には、離婚をしたい夫婦の片方は離婚をするために法的な手続きを取ることが必要となります。
3 離婚手続きの流れ
離婚については協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚という4つの方法があります(このうち、審判離婚はほとんど利用されていません)。このうち、上に述べた当事者間での話し合いによる解決が協議離婚となります。
当事者間の話し合いでまとまらない場合には、離婚を希望する当事者は家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、調停の中で離婚に関する話し合いをすることとなります。ここで話し合いが成立すれば調停離婚が成立します。
調停でも話し合いがつかず、調停が不成立となってしまった場合、離婚を求める方は離婚訴訟を提起して、裁判所に判断を求めることとなります。最終的に裁判所が離婚を認める判決を出した場合には、裁判離婚となります。
4 有責配偶者からの離婚請求について
(1)離婚裁判で離婚が認められる条件
上記のように、調停までは当事者間の話し合いによって離婚に双方が同意するかどうかが問題になるのに対し、裁判では離婚原因があるかどうかによって離婚を認めるか否かを裁判所が判断します。
法律に定めた離婚原因がある場合に初めて裁判所は離婚を認めることができ、離婚原因がないと判断されれば離婚請求は棄却されます。そして法律上、離婚原因としては次のようなものが挙げられています。
民法第770条【裁判上の離婚】
①夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
(2)有責配偶者からの離婚請求は原則として認められない
民法770条1項1号は、不貞行為があったことを離婚原因として認めています。それでは不貞行為をした配偶者(離婚の原因を作った配偶者という意味で有責配偶者と呼ばれます)が、離婚原因として不貞を主張して離婚を求めることはできるでしょうか。
この点、最高裁判所大法廷判決昭和62年9月2日は有責配偶者からの離婚請求は認められる場合があるとしながらも、離婚請求は原則として「信義誠実の原則」に反し許されないとしました。婚姻関係の破綻に責任がないもう一方の配偶者が、一方的に離婚を受け入れなければならないとすることは社会正義に反するという理由からです。
(3)有責配偶者からの離婚請求が認められる例外的なケース
上記最高裁判決は、有責配偶者の離婚請求を認めるにあたっては①別居期間が同居期間などとの対比で相当長期に及んでいるかどうか、②夫婦の間に未成熟の子が存在しないかどうか、③離婚によって相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に過酷な状況に置かれないかどうかといった要件を検討する事が必要としています。
実際に、夫婦間に未成熟の子がおらず、別居期間が7年〜10年以上に及んでおり、離婚を認めることが配偶者に特に酷でない場合などでは、有責配偶者からの離婚請求を認めるケースも存在します。もっともこれらの条件を全て満たすようなケースは離婚請求事件全体からみても少数にとどまるでしょう。
5 離婚に応じるメリットはあるかを考える
上記のとおり、有責配偶者からの離婚請求は原則として拒むことができます。もっとも、不貞により夫婦関係の修復が困難になってしまったような場合に、それでも離婚を拒むのかはよく考える必要があります。
離婚に応じない方の中には、経済的な理由(自身の生活費や子供の学費等)から離婚をしたくてもできないと考え、離婚を躊躇していることが少なくありません。
しかしながら、不貞をした相手方に対し慰謝料の請求や財産分与を求め、更に養育費などの取り決めをすることで今後の生活の保障を立てることができる場合もあります。そのため経済的な理由から離婚を躊躇されていても、離婚条件に関する交渉次第では、経済面での保障を得て離婚することが可能なケースもあります。
離婚に応じるかどうかについてはご自身の夫婦生活への気持ちや、離婚をした場合に生じる生活への影響を十分に考えた上で検討されることが望ましいといえます。
6 最後に
本コラムでは不貞をした配偶者(有責配偶者)からの離婚請求が認められるかどうかについて解説してきました。離婚を拒むことは基本的に可能ですが、既に夫婦でのやり直しが難しい場合など、条件によっては離婚に応じたほうが望ましい場合も存在します。
横浜シティ法律事務所では不貞や離婚問題に関し、経験豊富な弁護士が在籍しております。初回相談は無料でお受けしておりますので、離婚をするかどうかなどについて検討中の方はぜひ一度ご相談ください。
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